人生じまいの向こう側
近頃は大々的な告別式を辞退する家庭も珍しくなく
なってきました。
葬儀や告別式も多様化されて、
家族葬、友人葬、密葬、小さなお葬式などが
選ばれるケースも少なくありません。
私が購読している地方紙には告別式のお知らせの欄が
あるのですが、そこに掲載を依頼する件数も
極端に少なくなってきたように思われます。
私事で恐縮ですが、在京の兄弟のうちの一人は、
「私が亡くなったという知らせを受けても、
わざわざ遠方から来なくてもいいから」と言いました。
半分は冗談かも知れませんが、お葬式に対する考え方が、
従前よりは軽くなったのでは?とも思えます。
【お話その1】
先日こんなことが。
紙面にHさんの訃報が乗っていたのです。
なんと、そのHさんとは数日前にお会いしたばかりだったのです。
入所するケアハウスの一室にお邪魔をすると、
ちょうど点滴が終わったあとの針を抜かれている最中でした。
顔色はあまりよくなくて生気が感じられませんでした。
でもそこは病院ではないので「面会謝絶」などではなく、
老衰していく人の一過程のようなありさまでした。
抜針の跡からは出血もせず、青いあざ状の腕からは
まるで鼓動のような感じがなかったです。
そして目にした死亡記事。
その後のことは分かりません。
【お話その2】
ヘァカット専門のチェーン店で。
1100円でカットしてもらえるとあって、
その美容院はいつも盛況です。
さて、私の番がきました。
担当の美容師さんはマスクをしていたので少し若いかな、
と思っていると、雑談を通して意外と年配だとわかりました。
美容師さんの実のお父様が亡くなられて1年だとかで、
死にいたった話をしてくれました。
お父さんの趣味は釣り。
85歳にもなるので危ないからと心配する家族を尻目に
その日も磯づりにでかけたそうです。
残した言葉が「好きな釣りで死ねたら本望だ」って。
でも、元気に帰ってきました。数匹の獲物を釣って。
そして自分でさばいて刺身にし、家族全員で食べたとか。
その時、お父さんはビールをいつもの倍の2本飲んだんだそうです。
そして、「今日は早寝をするか。明日はまた釣りに行くぞ」と言って
寝室へ引きあげたんだとか。
そして翌朝、お父さんは静かな表情で旅立っていたのです。
それを見た家族は、誰も泣かなかったんだそうです。
口々に「ご苦労様。ありがとう」と言ったのです。
そしてお葬式は、本人がかねがね言っていた「家族葬」に。
人生には必ず訪れる「その日」。
自分にはどんな日になるのでしょうか?
ここ2日間、考えさせられました。
事前に決めておく方法もありますね。