情報のチカラって強烈ですね、よくも悪くも
私の住む町は香川県三豊市。
平成の大合併の波に乗って誕生した小さな「市」です。
田園地帯を擁する7つの町が寄り合った市なので、
未だに「おらが町」といった考え方が根強く残っています。
都会に行って出身地を「香川県です」と言ったら、
返ってくる言葉は「あ~、四国の?」って。
これはまだいい方で、「香川って、もしかして四国だっけ?」と
言われてしまうことも珍しくなくて、寂しい思いをすることもしばしば。
四国だから4つの国、つまり4つの県があることだけは
知ってもらっているのですが、
その4つの県名や位置を覚えてもらっているかと言うと、
はなはだおぼつかないのが実際のところです。
そんな香川県は、あとの3県のように有名人とか名物があまりないので、
質素で日陰のような存在だったわけです。
その中でも「三豊」は目立たずすこぶる地味で、ひっそりとした
静寂な地域だったのですね。
ところが。
このわが市が全国的に脚光を浴びるようになろうとは、
誰が想像したでしょうか?
これはひとえに、マスコミに取り上げられたことに起因すると
思います。
【紫雲出山】
「しうでやま」と読みます。
当地は「浦島伝説」が残っているのですが、
紫雲出山は、太郎が玉手箱を開けた途端、
紫の煙が立ち上った所とされているのです。
山頂から瀬戸内海を見下ろす絶景は、
「生涯に一度は目にしたい風景だ」と言った人がいたとかどうとか。
とにかく美しいです。
海外旅行客が魅力を再認識し、憧れの旅行先として訪れる日本。ニューヨークタイムズが「2019年行くべき52カ所の旅行先(52 places to go in 2019 New York Times)」として第7位に選んだのは、「瀬戸内の島々」でした。52カ所の旅行先で、日本唯一のランクインという快挙。
「瀬戸内の島々」を代表する顔として、香川県三豊市の「紫雲出山(しうでやま)の夕暮れ」の桜の写真が選ばれました。
ー「紫雲出山の夕暮れ」ニューヨークタイムズに掲載された写真ー
紫雲出山の桜並木は、どのようにしてできあがったか
これらの見事な桜は、自然に出来上がったものではありません。
戦後の失業対策事業として山道の整備と桜の植樹によって
できあがったものです。
折しも植樹に携わった前田雄三さん(故人)が偶然に見つけたものが、
とんでもないものだったと判明したのです。
「弥生式土器」の破片だったのです。
それからというもの、京大の小林講師らの派遣を受けて
大々的な発掘調査が行われることになりました。
前田さんはそれ以後、仕事を捨てて遺物の収集にあたり、
山頂で保管作業もしたんですね。
標高342メートルの山頂で、遺物が見つかったのですから
その意味は大きかったのです。
水もない山頂でなぜ稲作がおこなわれたのかって。
電気もない、ろくな登山道もない山頂での小屋生活は、
奥さんやお子さんに苦労を強いることになって、
とても苦しんだようです。
それを題材にしたフィクション童話もあるようです。
そんな秘話もお知りいただいたうえで、ぜひ、紫雲出山に
お越しくださいませ。
この絶景も、もしマスコミに取り上げられなかったら、
今のように広く知られることはなかったでしょう。
よくも悪くも、口コミの影響力は大きいと言えましょう。